大刀洗平和記念館(福岡県)震電

大刀洗平和記念館 震電
福岡県朝倉郡筑前町にある筑前町立「大刀洗平和記念館」に、大戦末期に試作された旧帝国海軍の十八試局地戦闘機「震電」の実物大模型が展示されている。

令和5年秋に公開された「ゴジラ-1.0」に「震電」が登場しており、一緒にゴジラを観た妻がめずらしくあの戦闘機を見てみたいと・・、大刀洗平和記念館に「震電」が展示されたのは令和4年7月から、見に行きたいとは思っていたので、久々に大刀洗を訪れた。
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エンジンと尾翼の取り付け位置を前後逆にしたエンテ型(先尾翼)戦闘機、海軍航空技術廠の鶴野大尉の発案により九州飛行機に試作指示された局地戦闘機である。略符号は J7W1。
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三菱の「ハ43」42型エンジン(2,030hp)を搭載、高度8,700mにて最高速度400kt以上を計画、プロペラは6翅、機首には30㎜機銃を4挺搭載である。
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B-29の迎撃機として期待されたが、1号機完成が昭和20年6月で初飛行は8月3日、試作機のまま終戦を迎えた。「震電」を開発した九州飛行機は福岡市にあった航空機製造会社、零式水偵などの機体を製造、母体は渡辺鉄工で現在も魚雷関連機器を製造し存続している。

展示されている震電は「ゴジラ-1.0」の撮影用に製作された機体で、よくできている。
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館内では映画関連(震電の製作過程など)の展示もされていた。
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劇中ではゴジラに突入した震電から神木隆之介が脱出するが、実際の震電には座席射出装置は付いていない。当時の日本にはその技術はなく、脱出時にはプロペラを軸ごと爆破し巻き込まれを防ぐという方法だったらしい(碇義朗著「海軍空技廠」より)。

大刀洗にはかつて陸軍大刀洗飛行場があり陸軍大刀洗飛行学校があった。この飛行学校の分校が特攻基地として有名な知覧分校である。大刀洗平和記念館には特攻機としても多く使用された旧陸軍「九七式戦闘機」が展示されている。
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本機は現存する唯一の「九七式戦」で博多湾から引き上げられた機体である。試作名称は「キ27」、連合軍のコードネームは「Nate」、中島製単座戦闘機にみられる前縁直線翼の採用は九七式戦が最初という。

大刀洗にあった飛行場は旧陸軍の施設であるが、平和記念館には旧海軍の零式艦上戦闘機32型が展示されている。この零戦は現存する唯一の「32型」である。
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零式艦上戦闘機32型(A6M3)は二号型零戦と呼ばれ、発動機を栄21型に換装、空母搭載のため折り畳みとした翼を両端カット、性能向上と生産工程の短縮を図った。しかし、水平面における零戦の軽快な運動性能が犠牲となり、期待ほどの速度向上も望めず、生産は343機で終了した。

大刀洗平和記念館の最寄駅は甘木鉄道・太刀洗駅、ローカルな鉄道なので本数が少ない。
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ちなみに「大刀洗」と「太刀洗」、本来は「太刀洗」で、明治の町村制発足のとき「大刀洗村」と官報に表記され、町名は「大刀洗」となり、駅名は「太刀洗」とのことらしい・・ややこしい。

大刀洗平和記念館付近地図


記念館で展示されていた新聞記事の震電(実機)写真。
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断片的に福岡工場、震電、30㎜キャノン等の文字が確認できる。

(2024年4月下旬 撮影機材 Nikon Zfc)

関連ブログ:大刀洗の零戦32型
読んだ本(Amazonの該当頁へ)「海軍空技廠」碇義朗著
観た映画(Amazonの該当頁へ)「ゴジラ-1.0」

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